サステナブル経営格付2007について
はじめに
 サステナブル経営格付は、環境経営学会発足直後の2002年度に第1回環境経営格付として実施して以来、2007年度まで6回にわたり当学会の主要な事業として取り組んで参りました。
 その狙いは、
@. 地球環境の維持・保全・回復と、持続可能な文明社会の構築に貢献する方向に、大きな力を持つ組織、当面、企業の活動を向ける
A. 組織、取分け企業経営の持続的発展を可能とする基盤の整備に貢献する
B. 組織・企業のマルチステークホルダ・コミュニケーションに資する
 そのための手法として、学会は350項目を超える評価項目を設定し、これをサステナブルマネジメント・ツリー図(以下、ツリー図)に表示して企業のサステナブル経営度を明示する方法を開発しました。

 上記の狙いを鮮明にするため、2007年度から名称をサステナブル経営格付/経営診断と改めました。

 2007年度の活動は、2007年10月に開始、2008年4月参加企業に対して結果報告を行い、2008年5月環境経営学会年次研究報告大会における報告をおこない、完了いたしました。

 サステナブル経営格付/経営診断2007の狙いや枠組みは、基本的には2005年度、2006年度の狙いや枠組みを踏襲しました。すなわちサステナブル経営の定義は次のとおりとしました。

企業は社会の公器であるとの認識の下に、持続可能な社会の構築に企業として貢献することを経営理念の一つの柱と定めて経営を進め、社会からの信頼の獲得と経済的な成果を継続的に挙げることによって真の企業価値を高め、企業の持続的発展を図る経営


 格付の評価項目は、「評価側面」は経営、環境、社会の各分野合計19側面、「設問」は162問、5段階評価を行う「必須要件」は368項目としました。評価基準の検討に当たっては、企業不祥事への対応、地球温暖化防止への対応、育児・介護へ支援など、進展する社会の動きを踏まえた基準を設定するなど、評価の公平性・公正性を徹底させるとともに、より高度な対応を要求する項目も増加させることとなりました。

 なお、2007のサステナブル経営格付活動は、2006年度に引き続き、独立行政法人地球再生保全機構の地球環境基金の助成事業として推進いたしました。

2007年度の評価結果の概要
 サステナブル経営格付/経営診断の評価側面ごとの平均獲得率は下図のとおりです。
1) 経営分野(A企業統治〜E情報戦略)は、全ての側面で90%を超える高い獲得率となりました。 この中で、前年度までの「B企業統治」を「A経営理念」に統合し、新たに「A企業統治」として設定した側面については、91.0%と、経営分野の中では比較低位に止まっています。 これは、日本版SOX法の制などの潮流を背景として、学会として、いわゆる「内部統制を法令以上に厳格に定義し、これに基づき、取締役に対して、企業統治の強化の担い手として、取締役の内部統制義務(相互牽制義務、任務懈怠回避義務など)を方針、仕組に組み入れていることを必須要件としたのに対し、企業側の理解が必ずしも十分ではなかったことによると見られます。 なお、「社外取締役」については参加企業中過半数の企業が選定されていることからは、学会の考え方は次第に浸透しつつあるとも考えられます。

2) 環境分野(F物質・エネルギー管理〜M土壌・水質汚染の防止・解消)では、前年までの「L輸送に伴う環境負荷低減」を「K地球温暖化の防止」に統合しました。評点獲得率を見ると、「F物質・エネルギー管理」、「J生物多様性の保全」、「K地球温暖化の防止」及び「M土壌・水質汚染の防止・解消」の4側面については、学会の提唱するあるべき姿に向けた経営は依然として十分浸透していないようです。 これらの4側面は、今日、地球温暖化や資源枯渇問題、生態系の保全など、地球レベル、国家レベルで推進すべき課題と個別企業の果たすべき責務のあり方に対して、学会が積極的に根源的な課題を提起している側面です。 学会としても更なる研究の深耕を図ることは勿論のこと、いかなるアクションによれば到達可能なのかの処方箋を社会に対して提示し、対話と協働により、企業社会への定着化を図っていく必要があると考えます。 企業社会の一層の理解を求めたい側面であり、また学会として課題が残った評価結果となりました。
 2008年度においては、これまでの経験を基に経営評価手法全体を見直し再構築することとし、そのための新たなサステイナブル経営研究の場を設定し、既に活動を開始しております。

3) 社会分野(N持続可能な社会を目指す企業文化〜U地域社会の共通財産の構築)に関しては、前年に比し企業間の獲得率の格差が拡大するとともに、平均獲得率が低下しました。 特に、「S仕事と私的生活の調和」については、今回85%と対前年約5ポイント低下しましたが、これは所謂ワークライフバランスに関する社会的関心の高まりの潮流を取り入れた学会の評価基準に対して、一部の企業では対応の遅れがあったためと推定されます。 更に、「O消費者への責任履行」、「P安全で健康的な環境の確保」及び「TCSR調達」に関しては、個人情報漏洩問題、労働災害、サプライチェーンへの配慮不足、などに関して一部の企業の低い評価が平均点を低下させる原因となったと考えられます。
 なお、「N持続可能な社会を目指す企業文化」において、必須要件として強く提唱して参りました「談合等の廃絶」に関する企業文化としての定着状況については、スローテンポながら着実に進展が見られたことを付言します。

2008年度の計画
 2008年度においては、これまでの経験を基に経営評価手法全体を見直し再構築することとし、そのための新たなサステイナブル経営研究の場を設定し、既に活動を開始しております。
2008年度はこれらの研究成果をもとに、新たなサステイナブル経営格付/診断として、間もなく、企業、組織の皆様にご案内を差し上げる予定であります。

おわりに
 最後に、多忙な中、学会のサステナブル経営格付2006に参加いただいた、格付参加企業、 研修会参加企業の皆様に心からお礼を申し上げます。今後ともサステナブル経営のトップランナーであり続けていただくよう心から期待します。  また、地球環境基金助成事業への道を拓いていただいた、独立行政法人環境再生保全機構に対して、 深甚なる謝意を表します。  さらに、無報酬のボランティア活動で真摯に格付活動を推進していただいた、学会員諸兄姉に対し、 衷心より敬意と感謝の意を表します。

 以下に、参加された企業の中で、ツリー図の公表に応じていただいた5社のツリー図を掲載します。

2008年9月
特定非営利活動法人環境経営学会
理事格付推進委員長 中村 晴永
サステナブルマネジメント・ツリー図
 葉の色によって、その側面の「戦略」「仕組み」「成果」別に、組織・企業の活動が
 到達している水準を表しています。
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株式会社大塚商会 TOTO株式会社
東レ株式会社 株式会社ニチレイフーズ
株式会社日本ハム株式会社 富士電機ホールディングス株式会社
           
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