サステイナブル経営格付/診断2008について
はじめに
 サステイナブル経営格付は、環境経営学会発足直後の2002年度に第1回環境経営格付として実施して以来、2008年度までに 7回にわたり当学会の主要な事業として推進してきました。
 2008年度は、2008年10月〜2009年4月の間において、経営研修会、参加企業の自己評価、評価委員によるヒアリング、 経営インタビュなどを重ね、格付評価の決定、サステイナブルマネジメント・ツリー図の参加企業各位への報告などを経て、 2009年度環境経営学会研究報告大会(2009年6月5日、6日開催)における結果の報告を以って完了しました。
1. サステイナブル経営格付/診断2008の狙いと枠組み
 その狙いは次のとおりです。
@. 地球環境の維持・保全・回復と、持続可能な文明社会の構築に貢献する方向に、大きな力を持つ組織、 当面、企業の活動を向ける
A. 組織、取分け企業経営の持続的発展を可能とする基盤の整備に貢献する
B. 組織・企業のマルチステークホルダ・コミュニケーションに資する
 枠組みは、基本的には前年度までの枠組みを踏襲し、評価側面や評価項目の見直しを実施しました。

 サステイナブル経営の定義も、前年度までの定義を踏襲し、次のとおりとしました。

企業は社会の公器であるとの認識の下に、持続可能な社会の構築に企業として貢献することを経営理念の一つの柱と定めて 経営を進め、社会からの信頼の獲得と経済的な成果を継続的に挙げることによって真の企業価値を高め、企業の持続的発展を図る経営


 格付の評価項目は、「評価側面」は経営、環境、社会の各分野合計19側面、「設問」は162問、 5段階評価を行う「必須要件」は368項目としました。評価基準の検討に当たっては、企業不祥事への対応、 地球温暖化防止への対応、育児・介護へ支援など、進展する社会の動きを踏まえた基準を設定するなど、 評価の公平性・公正性を徹底させるとともに、より高度な対応を要求する項目も増加させることとなりました。

 今回の格付活動も、2006年度、2007年度に引き続き独立行政法人環境再生保全機構の地球環境基金の助成事業として 推進しました。
 参加企業数は、研修会参加を含め10社となりました。

2. 2008年度の格付/診断結果の概要
 2008年度の結果を2006年度、2007年度との対比でグラフ化すると次の通りであります。
(1) 経営分野は「企業統治」を除き、高い評点獲得率を維持しました。「企業統治」については、獲得率は87%と、 経営分野の中では最も低い評価に止まりましたが、これは主として、学会が、企業統治の強化策として取締役の内部統制義務 (相互牽制義務、任務懈怠回避義務)を明記することを必須要件としたこと、および親会社から派遣される「社外取締役」 「社外監査役」は、「社外」とは認めないとしていること、これに対する企業側の対応が不十分であったことによると見られます。

(2) 環境分野では、前年までの「製品・サービスの環境負荷低減」を「物質・エネルギー管理」に統合しました。 評点獲得率を見ると、統合後の「物質・エネルギ管理・環境負荷低減」、「生物多様性の保全」、「地球温暖化の防止」及び 「土壌等汚染の防止・解消」の4側面については、際立って低い評価となり、学会の提唱するサステイナブル経営の「あるべき姿」が 依然として十分浸透していないか、あるいは受け入れられていないことを示すものです。これらの4側面は、今日、地球温暖化や 資源枯渇問題、生態系の保全など、地球レベル、国家レベルで推進すべき課題と個別企業の果たすべき責務のあり方に対して、学会が 積極的に根源的な課題を提起している側面であります。
 学会としても更なる研究の深耕を図ることは勿論のこと、警鐘を鳴らすに止まらず、いかなるアクションによれば到達可能なのかの処方箋を社会に対して提示し、対話と協働により、企業社会への定着化を図っていく必要があると考えます。

(3) 社会分野は、重要なステークホルダのうち、「消費者」への責任履行はほぼ持続可能な水準に到達しているとみられますが、 「従業員」に対する社会的責任の履行状況の中で、とくに「仕事と私的生活の調和(ワークライフバランス)」については、 昨今の非正規労働者に対する企業の対応状況に対して学会として危機感を募らせ、正社員に限定した取組みに対しては、評価を 1点減点することとしたこと、派遣社員に対する業務上必要な教育訓練の実施を項目に加えたこと、などに対して、一部の企業の 対応が遅れていたことなどから、昨年よりさらに獲得率が低下しました。また、「サプライチェーン」に対するCSR経営の徹底を 促す「CSR調達」に関しては、平均68%と社会分野では最も低い獲得率となっており、ほぼ満点に近いと評価された企業が 存在する半面、50%前後の評価にとどまる企業もあり、企業間のばらつきが最も大きい側面となりました。 「地域社会」との協働については、かなり改善されました。

おわりに
 最後に、多忙な中、学会のサステイナブル経営格付/診断2008に参加いただいた格付参加企業、研修会参加企業の皆様に 心からお礼を申し上げます。今後ともサステイナブル経営のトップランナーであり続けていただくよう心から期待します。
 また、地球環境基金助成事業に認定いただいた独立行政法人環境再生保全機構に対して、深甚なる謝意を表します。
 さらに、無報酬のボランティア活動で真摯に格付活動を推進していただいた、学会会員諸兄姉に対し、衷心より 敬意と感謝の意を表します。

2009年6月
特定非営利活動法人 環境経営学会
理事・経営格付推進委員長 中村 晴永
サステイナブルマネジメント・ツリー図
 葉の色によって、その側面の「戦略」「仕組み」「成果」別に、組織・企業の活動が
 到達している水準を表しています。
---------------------------------------------------------------------------------------- *下記の各社に成果の掲載を快諾いただきました。
            
株式会社大塚商会 tree comment TOTO株式会社 tree comment
株式会社ニチレイフーズ tree comment 日本ハム株式会社 tree
           
----------------------------------------------------------------------------------------

前のページに戻る   トップページに戻る