『持続可能性と経済成長のジレンマを越えて、適応と革新の未来へ』 伊藤 由宣
2025年10月24日
世界は今、サステナビリティの重要性を概念として広く認識しつつあります。気候変動、資源枯渇、生物多様性の喪失など、地球規模の環境リスクが顕在化する中で、持続可能な社会の構築は喫緊の課題です。しかし一方で、経済成長は依然として推進され、持続可能性との両立は十分に果たされていません。SDGsの2030年目標に向けた取り組みも、表面的な対応にとどまり、構造的な変革には至っていないのが現実です。
人類はこれまで、数々の危機を学習と技術革新によって乗り越えてきました。成長路線を完全に逆行させることは現実的ではなく、今後も経済成長は続いていくでしょう。その中で社会は、気候変動に「適応」する新たな構造を模索し始めています。災害へのレジリエンス、資源代替技術、都市の再設計など、適応を前提とした社会設計が求められています。
さらに、宇宙ビジネスへの関心の高まりは、人類の活動領域が地球から宇宙へ拡大しつつある兆しでもあります。月や火星への移住技術が進展するなか、地球上の気温上昇や食料・資源不足といった課題も、技術革新によって比較的短期間で克服される可能性があります。これは、環境変化を「所与のもの」として受け入れ、いかに適応していくかという視点の重要性を示しています。
環境経営学会としても、いわゆる社会共通資本、循環型社会、定常経済、ドーナツ経済、人新世、エコビレッジ、エシカル消費、倫理資本主義などの文脈で語られるような、多様な提言を通じて持続可能な社会のあり方を模索してきています。これらは理論的に意義ある方向性を示していますが、現実との乖離というジレンマが常に伴うのが現状です。だからこそ、啓蒙や教育を進めると同時に、環境変化への適応と、それを支える技術革新に焦点を当てることが現実的な選択肢となり得ます。
私たちは、理想と現実の間で揺れ動くこの時代において、新たな環境下における未来社会を切り拓くために、議論を重ね、知見を共有し、積極的に発信していく役割を担っています。持続可能性の本質を問い直しながら、次なる社会の構造を共に描いていきたいと考えています。(2025年10月24日)