menu

メニュー

『善き企業人』 鶴田 佳史

現代社会が、気候変動、生物多様性劣化、資源枯渇、食糧・水資源問題、化学物質汚染など、深刻な環境問題を抱えているいま、企業は、サステナビリティを志向した経営行動をとることが社会から要請されているそして、社会をサステナビリティにもとづくものへと変え持続可能な社会を実現するのは、サステナビリティへの強い認識と想いを持った企業経営者である。企業が、さまざまな形で常に社会に開かれたものである以上、経営者は常に「善き企業人」として社会で存在することの意義と重要性を強く認識し行動することが必要となる。
2023年5月3日に不平等に取り組むためのビジネス委員会(BCTI:The Business Commission to Tackle Inequality)は、「不平等に取り組む:企業行動に関する指針(Tackling inequality: An agenda for business action)*」を公表した。この行動指針は、企業が、不平等(Inequality)を構造的で切実なリスクであることを認識し行動の水準を高め、増大する不平等に関する問題に対処することを期待したものとなっている。不平等が自然現象ではなく変えることができる構造化されたシステムの産物であり、不平等の是正に企業は必要不可欠な役割を担っていると述べている。また、不平等が重大かつ増大するビジネスリスクであるとの指摘もあり、企業経営者は不平等への取り組みをすることが必要となる。このように、企業は今後、前述の環境問題への対応に加え、不平等への取り組みが求められ、人権意識や社会性を強く持った行動ができる人材が必要となる。まさに、「善き企業人」の存在である。
環境経営学会は、設立当初から、産学官の知を集め実学も重視し、企業の環境経営推進に役立てるべく活動している。企業は、社会に適応するだけではなく、相互作用として、社会構造を変える影響力をもっている。環境経営学会の知見と活動が、「善き企業人」とともに、公平公正で持続可能なものへと現代社会を変革することの一助となることを願っている。(令和6年5月15日)

* https://tacklinginequality.org/flagship-report/ ,2024年5月10日閲覧。