
『ChatGPTはシンギュラリティの始まりか? 〜環境変化に対応した者だけが生き残れる〜』 村井 秀樹
2023年4月15日
突然ですが、皆さんはChatGPTを使用したことがありますか?
ChatGPTとは、イーロン・マスク氏らが出資しているOpenAIが、2022年11月に公開した人工知能チャットボットである。GPT:Generative Pre-trained Transformerを、「生成可能な事前学習済み変換器」と訳されている。
今、大学はChatGPTに対して、戦々恐々としている。上智大学等、一部の大学では、レポート、卒論等の作成で、ChatGPTを用いた場合、カンニング、盗作とみなし、停学処分あるいは単位を与えないと言う厳しい方針を打ち出している。私自身も1ヶ月ほど前に、ChatGPTに、会計学の基本問題を10題(択一短答式)とその解答を作らせた。所要時間はわずか1〜2分程度。多少、おかしな質問や解答があった。しかし、その間違った箇所に対して、さらに「チャット(対話)」を通じて、修正させ、より完成度を高めることができた。
AIの歴史は古く、1956年からである。これまで、1960年代、1980年〜1990年代、そして2012年のDeep Learning(深層学習)以降の3回のブームがある。前2回のブームの後には必ず低迷期があった。しかし、このChatGPTは、昨年の11月に発表してからわずか2ヶ月ほどで、世界80億人の1億人が使用している。低迷期などなく、4回目のブームに突入した感がある。まさに脅威である。
シンギュラリティと言う言葉を知ったのは、今から7年前の2016年のソフトバンクの第36回定時株主総会である。孫正義氏は、「ヒトの脳細胞の数(=300億個)」と「コンピューターに組み込めるトランジスタの数」の比較をし、AIは2018年に人類を追い抜くと言っていた。しかし、これはあくまでも「数」の話であり、人間の知性を完全に凌駕する「シンギュラリティ(特異点)」は、2040年代ではないかと話していた。しかし、ChatGPTの出現により、予測よりも早く、人間の知性を超えるのではないだろうか?否、もう超えているかも知れない。ディープラーニングの第一人者である松尾豊氏は、AIは職業を奪うのではなく、人間のタスクをAIが行うものであるが、単一のタスク=単一の職業であれば、職業自体がなくなる可能性があると言う。ChatGPTが出現する前に出版されたオックスフォード大学の論文では、コールセンター、トラック運転、作曲、販売、小説を書く、外科手術等の職業は、あと50年以内に全てAIに置き換わると予想していた。しかし、ChatGPTはこれまでのAIとは全く違っている。おそらく、5~10年内に、ホワイトカラーのすべての職業に影響を及ぼすであろう。では、このようなディープラーニングの技術にどのように対応すれば良いのか?現在、規制すべきだと言う意見も出ているが、ディープラーニングのイノベーションはさらに拍車をかけて進化していく。まさに、イタチごっこである。
さて、冒頭に戻るが、ChatGPTに次のような質問をすれば、どのような返事があるだろうか?実際に、会員の皆さんから質問していただきたい。うまく使いこなせば、本学会の重要なコンサルを担うかも知れない。ChatGPTは、手段であり、それ自体が目的ではない。
① 企業は、持続可能(サステナブル)な経営のために、今後何をすべきか?重要と考えられる項目を10個挙げなさい。またその理由を3000字程度にまとめなさい。
② 環境経営学会が、今後取り組むべき最重要研究課題を3つ挙げなさい。また、会員を増加するための方策を5つほど挙げ、その実現可能な具体策を1000字程度でまとめなさい。
ChatGPTは、雇用問題、経済・社会体制、心身の健康等の医療体制を劇的に変える一つのトリガーになる。今後は、ダーウィンの言う「環境変化に対応できる者だけが生き残れる」のである。(2023年4月15日)