
『SDGsウオッシングを憂う』 九里 徳泰
2021年10月15日
電通の調査によると2018年のSDGsの生活者認知度は14.8%であったが、2021年のSDGs生活者認知度は54.2%となり、10代のSDGs生活者認知度は7割超えているという。SDGsの認知経路は、テレビ番組が47.3%、インターネットが32.0%、新聞が24.2%とSDGsのメディア露出が増えていることも背景にありそうだ。しかし、5割を超えたSDGs生活者認知度のうち「内容まで含めて知っている」という人は20.5%で、どうもSDGsという単語だけが独り歩きし、うわべだけのSDGsの認知ではないかということが懸念される。SDGsは17の目標と169のターゲット、244の指標で構成されている(2021年8月現在)。2030年には244の定量的な指標を踏まえてその定量目標の数字を合算し目標に対しての達成度を確認することになる。例えば、自動車産業にかかわるSDGsの大きな関連性は、ゴール3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」でターゲットは3.6 「2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。」であり、測定する指標は3.6.1「道路交通事故による死亡率」である。つまり、SDGsのゴールとターゲットの先の人類が達成すべき測定される数字を追わなくてはいけない。企業は大手を中心にSDGsの取り組みをホームページ等で発表しているが、2020年に発表された経団連のSDGsのインパクト評価事例集を本業(製品・サービス)とSDGsの定量指標の関連性の観点から分析すると、現状では企業もうわべだけのSDGsへの取り組みと言わざるをえない。本報告対象77事業の内、SDGs指標の設定は、17のゴールを対象(26事業)、169のターゲットを対象(20事業)、230の指標を対象(2事業)、独自指標(29事業)となっており(指標の重複あり)、多くの事業がSDGsの大枠のゴールや定性的なターゲットと自社事業の関りを示しているだけで、SDGsの「ゴール」として重要な2030年時点での環境・社会問題への解決への貢献を測定可能なものとして実現するということに接続できていない。事業会社はバッチだけのSDGs活動をしても「ゴール」へと結びつかない、ということを強く認識しなくてはいけない。また生活者は、SDGsの17のゴールの美辞の本質は極めて現実的な数字の目標があることを強く認識し、それをどのように企業が達成しようとしているのかに関心を持ち、そして自らが生活の中で何が貢献できるかを考える時機ではないだろうか。(2021年10月)