『インクルージョンとサーキュラーエコノミー ~物質の循環から、関係性の循環へ~』 野村 佐智代
2026年10月10日
インクルージョンとサーキュラーエコノミー
~物質の循環から、関係性の循環へ~
環境経営学会 理事 野村 佐智代
2019年、サステナブル・ビジネス・マガジン『オルタナ』主催のサーキュラーエコノミー研修会に参加するためロンドンを訪れて以来、日本における循環型経済の普及と推進に強い関心を寄せてきた。英国で目にした先進的な取り組みとその思想の深さに感銘を受け、自らの研究と教育の場である大学キャンパスで、サーキュラーエコノミーの実践モデルをいかに構築できるかを模索し続けている。
本学会の大会でも、学生たちと取り組んできた学内での紙資源や衣類の回収・循環システムについて、これまでたびたび報告と議論の機会をいただいてきた。理論と現場の往還を重ねるなかで、資源を循環させる仕組みづくりには、技術やシステムだけでなく、人々の行動変容や社会的な関わりが不可欠であることを実感している。
そうした取り組みの一環として、先日、深く印象に残る体験をした。ゼミ生たちと進めている、学内で回収した不要な雑紙を再生トイレットペーパーに生まれ変わらせ、再び学内に還元するプロジェクトでの一幕である。本プロジェクトは、リサイクルペーパーの先駆的企業であるコアレックス信栄株式会社と協働して進めている。この日は、本学が所在する八王子市内の福祉作業所(就労継続支援施設「フードバンク八王子ワークス」)で、ゼミ生が考案したオリジナルデザインの包装紙を用い、作業所の皆様と一緒に再生トイレットペーパーを一巻ずつ手作業で包装した。同社から包装の手順をご説明いただいたものの、はじめは学生たちも作業所の皆様も慣れない手つきで悪戦苦闘していた。しかし、互いに声を掛け合い、コツを教え合ううちに会場には一体感が広がり、1時間半ほどで500ロールが完成した。
この小さな現場での体験は、サーキュラーエコノミーの本質的な意義を改めて私に教えてくれた。資源循環の推進は、一つの企業や組織の中だけで完結するものではない。大学、企業、そして地域の福祉作業所という、普段は接点の少ない異なる領域のステークホルダーが目的を共有し、ともにつくりあげていく過程にこそ、循環構築の礎がある。それはまた、環境負荷の低減という「環境価値」の創出が、地域福祉や社会包摂(ソーシャル・インクルージョン)といった「社会価値」、さらには「地域のウェルビーイング」と密接に結びついていることの証左でもあろう。
私たちが目指すべきサーキュラーエコノミーとは、単に「物質のループ」を閉じることにとどまるものではないだろう。物質の循環を媒介としながら人と地域のつながりを広げ、社会との関わりを育む「関係性の循環」こそが、これからの環境経営に求められる視点であると考える。ささやかな手作業から生まれた資源循環の輪が、持続可能で心豊かな未来を手繰り寄せる一助となることを願い、今後も現場での実践と探究を続けていきたい。(2026年10月10日)