
『環境対策は後退してしまうのか』 宮崎 智子
2025年3月9日
3月初旬にインドネシアのゴロンタロ州に出張した。同州は、インドネシアの最貧州の1つで、主要産業は農業である。農民は州政府が奨励するトウモロコシを栽培するために、焼き畑農業を行うため、森林破壊がかなり深刻な状況である。筆者が属する団体は現地パートナーとともに、森林再生と農民の生計向上を実現するデカップリングを目指し、昨年よりアグロフォレストリーによるオーガニックカカオ栽培に取り組んでいる。1年間の活動による最大の変化は、多くのGenZが環境に配慮したカカオ栽培に関心を示し、農民グループをリードする存在に成長していたことだ。破壊された森林跡地に若者たちが植えた多くの苗木を見て、次回訪問時に緑豊かな地に再生している姿を眺めている自分を想像し、心が躍った。
一方で、USAIDの海外援助停止の影響で、インドネシアでは既に3つの自然保護プロジェクトが90日の活動停止に陥っているそうだ。90日後に活動が復活するか否かは不明だが、既に解雇者も出ているらしい。援助撤退になった場合、生態系の劣化は免れない。
USAIDのみならず、大手金融機関による主要気候変動対策グループ「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」からの脱退が相次いで発表されるなど、経済成長を優先する動きが加速している。
しかし、SDGsウェディングケーキモデルが示す通り、「経済」の発展は、生活や教育などの社会条件によって成り立ち、「社会」は最下層の「生物圏」、つまりは人々が生活するために必要な自然の環境によって支えられていることを忘れてはならない。近視眼的な利益追従に陥らないために、しっかり提言を行うなど、学会としての役割を果たさねばならないという思いを強くしている。(2025年3月9日)