
『2024年 新年あいさつ』 岡本 享二
2024年1月14日
あけましておめでとうございます。
新年早々の能登半島地震、JAL機炎上事故でお正月気分も吹き飛んだことでしょう。この原稿も年末までにあらかた構想を練っていましたが、全てご破算にして、年頭雑感として思いつくまま記していくことにしました。
年末、忘年会に8回参加しました。近年、こんなに忘年会をやった記憶はありません。ここ3年のコロナ禍によって集会が中止になっていた反動だと思います。8回のうち6回が中華料理店だったというのもなんとなく納得です。学会関係者とは、SMFサロン終了後に、学会アカデミー会議室近くの中華料理屋さんで行いました。10人ほどが集まり、新しいメンバーの方々もいらっしゃって和気あいあいと楽しいひとときを過ごしました。他で印象的だったのは、米寿を祝う方を中心に集まった、地域のラジオ体操仲間の忘年会です。ご高齢者が多く、物忘れ、勘違い、要領を得ない行動など、いろんなことが起こって「これが日本の高齢化社会の現状かぁ」と言う思いで参加していました。
新年会もいくつか予定されていますが、こちらは、日を急ぐこともなく、1月か2月の内にという感じです。そんな中で、印象的だったのは九州の私立大学に赴任していた先生(女性)のお話です。日本の私学の窮状を垣間見た気がしました。研究や出版実績よりも生徒募集が中心の任務だったそうです。各先生に担当県が割り当てられていて、受け持ちの高校を回って募集するのが最優先の仕事だったとのこと。受講生は東南アジアからの留学生が4〜5割を占め、授業は雑談でうるさくて、なかなか講義が成り立たないと嘆いておられました。「これが日本の底辺の大学かぁ」とびっくりして聞いていました。
能登半島地震に戻ります。相変わらず政府の対応は問題が起こってからの対処方法で、がっかりしました。当学会の『生物から学ぶ企業経営研究会』の中で、災害対策として、各自治体がそれぞれに見合った日本中の遠隔地の自治体とマッチングして2、3の地域と交流契約を結び、災害が起きたときにはそこへ避難すると言うアイディアが出ていました。現状の能登半島地震では、余震が頻繁に起こり、道路が寸断されている中で、いわゆる近隣の避難場に住民を移動させています。そこに飲料、食料、医療を提供すると言う、全く現場の状況にそぐわない方法をとっています。災害時に間髪を入れず、まず住民をヘリコプターなどで提携している自治体に移送することによって、受け入れ先の自治体の人々もサポートが可能になります。飲料、食料、医療の確保も容易です。余震による再被害も防げます。100年計画で行って、100年交流を続けて1度も災害が起きないということであって良いのです。このような思い切った施策が必要なのではないでしょうか。
昨年夏、災害研究のエキスパートからの講演(NHK)が印象に残っています。講師は「災害時に何が必要だと思いますか? 3つ挙げてください」と会場の参加者に質問しますが、講師が期待する回答はなかったそうです。講師の正解はなんと『鉄パイプ』でした。2メートルほどの鉄パイプが、各家庭に1本あれば、それで多くの人の命が救えるとのことです。神戸大震災を念頭にお話されているようでしたが、地震で建物に人が埋まっているときに、手では助けられなくて、生きたまま火に追われて死んだ方が多数いたとのことです。鉄パイプが何本か使えれば救出は比較的容易になるそうです。各家庭に鉄パイプは必要ですね。他人事として聞いていましたが、今回の能登半島地震を見聞して「うーん、鉄パイプも備えるべきだな」と思った次第です。寝袋も各人にひとつずつ用意しましょう。そんな防災用具の再確認をする気になった、年初の災難でした。
同様の思い切った施策は、環境経営学会の運営にも当てはまります。事務局長をはじめとする執行部の方々のご尽力により、学会事務所を廃止して外部委託することによって経費を大幅に削減し、本来の研究活動に注力できる体制になりました。しかし、当学会の年会費は10,000円です。ある大学の先生を「ウチの学会に入らないか」とお誘いしたところ、会費をお聞きになった上で、「私の今所属している学会は年会費ゼロです」ということでした。「オフィスも無ければ、外部委託の必要性もない、会員で手分けして論文集をネット上で公開しています」と言うことでした。研究費は企業から寄付を募っているそうです。
「なるほど!」と思いました。私はJeremy RifkinのThe ZERO Marginal Cost Societyの信奉者ですが、「彼の唱える真髄を地で行っている学会もあるのだな」と感心した次第です。
今年も既成概念にとらわれないで、新しい研究会や新しい手法での学会運営を進めたいと思います。皆さまからのお力添えをよろしくお願いいたします。 (1月14日2024年)