
『環境マネジメントからサステナビリティ経営会計へー私が環境経営と出会えてからー』 平岡 秀福
2023年11月11日
このたび,新理事として参画させていただけたことに心から感謝申し上げますとともに,巻頭言の執筆という大役まで仰せつかり,恐れ多いですが,当番制ということですので,皆さまにはやむなく私のつたない自己紹介を兼ねた文章をお読みいただければ幸いです。
私が本格的に環境経営に係る教育・研究に携わることになったのは,2000年前後頃だったでしょうか。当時,ハワイ大学でPh,Dを取得された環境経済学の専門家であられる天谷永教授(私の創価大学の大先輩でもある方)のご提案で,学部カリキュラム改正時期のタイミングで環境関連の科目をいくつか立ち上げました。経営学部ですので,環境マネジメント,環境会計,環境監査,環境コストマネジメントの4科目をそれぞれ半期週1回15コマ2単位で開設しました。私の専門は会計学ですので,環境会計,環境監査,環境コストマネジメントを担当し,環境マネジメントを天谷教授がご担当されました。その後,たしか天谷教授がハワイ大学への客員教授に招聘されたことを受けて,私がある期間,環境マネジメントも担当しました。しかし負担もあって,環境マネジメントは新任の先生を採用し,その方にお任せして,次のカリキュラム編成のタイミングを見計らって,また時代の流れが環境を中心に考えながらも労働・人権や統治などあらゆる社会的問題への対応を迫られてきていたことも受けて,環境会計と環境監査を統合してCSR会計とし,環境コストマネジメントはコストマネジメントに限定せず環境管理会計という広範なマネジメントの問題を取り上げる科目へと改正しました。その後,私も年齢を召してきましたので,CSR会計は私が博士論文(その一部は環境経営学会の査読付きジャーナルに掲載済み)の主査を担当した中国人(蒙雪超氏)や博士論文の副査を担当したネパール人(ガウタム・プラカッシュ氏)の助教に経験を積んでいただくためにも担当してもらいました。しかし,彼らも助教の任期を終え,いよいよCSR会計も環境管理会計も来年度からは私が再び担当することになりました。今後の自身の老化も考え,新カリキュラムではCSR会計と環境管理会計もサステナビリティ経営会計という一科目に統合することに決めました。私が令和3年度に指導した張さんの修士論文「企業のサステナビリティ行動の国際比較」にはサステナビリティを源流から考える歴史的レビューと,サステナビリティという言葉が多様性に富むため,あまり定義にこだわらず実際に行動に取り組んだ方がよく(kidd,1992),単なる流行語というよりは,環境問題をはじめとする様々な活動を包括する非常に強力な言葉という観点があるようです(Caradonna,2014)。ゆえに,会員の大学研究者と実務家のバランスが絶妙で実践⇔理論が行き来する環境経営学会において,本務校での新科目名に対応するサステナビリティ経営会計研究会を立ち上げさせていただき,現在研究会メンバーも5名まで増え(うち1名は環境経営学会への新入会者),これから微力ながら学会に貢献させていただく所存であります。最近,通称:学び舎ユネスコから参加の依頼があり加入することにしました。ユネスコ憲章には「人の心の中に平和のとりでを築かなければならない(抜粋)」とあります。環境経営学会の目指すべき道もこれに通じるものがあるのではないかと考える今日この頃です(2023年11月11日)。
Caradonna,Jeremy L.(2014) Sustainability : A History. OUPUSA.
Kidd,C.V.(1992)“The evolution of sustainability.” J Agric Environ Ethics 5, pp.1-26.。