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『すべてを支配するDNAは持続可能性を望むか、破滅を望むのか?』 宮崎 修行

コロナがやっと収束する可能性が見え隠れしてきた昨今である。まったく酷い3年間を人類は過ごしてきたわけであり、それに戦争まで加わって、いったいこの世界はどこに行くのであろうか?と思われる人も多いことであろう。そしてまた、この3年間ほどミクロの世界でのDNAの世界規模での急速な変異に一喜一憂した時代はなかったであろう。そこで本稿では、DNAに「ついて」(英語で言えばwrite on ではなくて、about やaround)とい筆者の個人的経験や関心領域から考えてみることにしたい。
50代くらいからもっとも関心を寄せたことは、「日本人とはなにか?」である。とりわけ、(政治的、経済的、社会的ではなく)DNAから考えた場合である。言語学的アプローチを採用すると、「日本語とは、ほぼチベット語である」というのが私の結論である。事実、万葉集で使用される語彙の多くの部分はチベット語である。この説を唱えたのは京都大学医学部を卒業した高名な医者である。
それでDNAから考えると、「日本人とはユダヤ人である」となる。これも明治時代から主張されてきたご存知の通説であるが、最近出版された、京都府立大学出身の医学部教授の書いた『日本人の遺伝子―ヒトゲノム計画からエピジェネティクスまで―』(角川新書)の帯に「日本人のDNAは古代ユダヤ人と共通している!」とあるが、これはもはや医学的にはあたりまえの通説であり、かつて東大や東北大の遺伝子研究機関が、同じような趣旨の研究成果を発表している。
私はいちおうICUでいまだに奉職するクリスチャンなので聖書を読むが、そこにも「(今から2000年ほど前に)ユダヤ国家(=イスラエル)が崩壊して国を追われたユダヤ人たちは、みんなで寄り添ってシルクロードを長途東方へ向かい、ついには海に出て、その海(日本海)を渡って島々(日本列島)に到達し、現在ではそこで「膨大な数の人口」となり、たいへん繁栄している」と書かれている(イザヤ書)。どういうわけか、この個所が教会で取り上げられた経験は一度もない、いわば禁断の部分であるが、本当にそういう記述が旧約聖書にある!!!
ということで、聖書の記述がDNAによる検証と一致しているわけで、私もこの説に魅かれ、この正月には千葉県にある「ユダヤ人埴輪」を見学に行ったりもした。興味がある方は、「ユダヤ人埴輪」で検索すると、たくさんヒットすると思うが、現実に目の前に1メートル近くにもなろうかという、近年発掘された数多くの巨大なユダヤ人埴輪が林立するのを見ると、感慨ひとしおであった。
さて、同じDNA系の話であるが、ちょっと別の切り口をご紹介したい。私は高校時代(青木さんが先輩で、前川副会長がこの高校の後輩で、お世話になってま~す!)は生物学専攻で、そこから森林生態学、すなわちエコロジーに関心が移っていき、その後、さらに経営学や会計学へと専門が代わってきたので、いまでも出発点となる<生物の進化>には非常に関心があり、コロナについても、生物学的(進化論的)観点からずっと見ていた。動物や植物の進化については、昔からチャールズ・ダーウィンの進化論が有名であり、それは皆様ご存知のように、すぐさま社会科学に応用され、優勝劣敗の資本主義を正当化するための、いわゆる<社会的進化論>となった。
このダーウィン流の<競争の原理(万人の万人に対する闘争)>にもとづく進化論にたいして、京都大学の今西錦司の、鮎の棲み分けの観察にもとづく<共生の原理>を高校の「現代国語」の時間に勉強することができたことが、その後の大学時代の<エコロジーとエコノミー>研究の出発点となった。
蛇足だが、高校1年生のときに「生物学」の授業が、(とても楽しみにしていた)生物学教科書最終章の「生態学(マクロ生物学=エコロジー)」の前で終わってしまったことが、大学卒業後にエコロジーを勉強し始めたモチベーションとなっている。まあ、3年生のときの「日本史」の授業は、<元禄時代>の章で終わった!!!ほどは、被害が大きくないかもしれないが・・・。
この「悲惨な事例」の反省から言えることは、「日本史(世界史)は現代史から指導する」そして「生物学は(細胞学からではなく)生態学=エコロジーから指導する」という、きわめて真っ当な結論であろう。さらに言えば、日本史と世界史を、<一つの歴史学>という授業で、高校で指導すれば、高校生たちの見識も違ってくるのではないだろうか?なぜ、スペイン・ポルトガルの世界進出(侵略)とザビエルのキリスト教布教を別々の科目で教えるのであろうか? 第2次世界大戦は、世界史?それとも日本史?・・・であろう。
さてダーウィンに戻るが、DNAが発見されてなかったダーウィン時代から200年以上たったDNA全盛時代の現代まで、生物が進化する本当の原因やメカニズムは、いまだ解明されていない。世の中では「解明されている」と勘違いしている純朴な人々が多いようであるが、私の印象では、まだ10%も解明されてはいない。
これは、シベリアの永久凍土からマンモス象の生前の姿をほとんどそのままとどめた遺骸が発掘されたのを見て、「きっと気候寒冷化でマンモス象は寒くて死んだのだ」と単純かつ素朴に思う人が多いのと同じである。
今日でも発掘されるマンモス象の遺骸の胃の中からは、一般にアフリカ原産のキンポウゲなどの南方性植物がたくさんでてくる。常識的に考えても、象は寒帯に住む動物ではなく、熱帯性の動物である。だから、少なくとも、シベリアの氷河地域に棲んでいたわけではない。といって、熱帯で死んだのならば、肉が食べられるほど新鮮な状態で残っているわけもない。2,3日で、腐敗して、骨格のほかは跡形も残らないことであろう。とすると、どういう可能性が考えられるか?答えは、もはや、一つしかないように思われる(事実は一つしかないという意味で一つ…本当は解明されていない謎である)。
さて、話を進化論に戻すが、現在、生物学会でもっとも有力視されているのが、<インフルエンザ進化論>である。
なぜ数ある学説の中でインフルエンザが<進化の原因>として最有力かといえば、それは「進化には最低1万個体~100万個体が同時に、DNAを書き換えられる」必要があるからだが、それが起こるのは、この自然界では「インフルエンザの流行」しかないわけで、実は、コロナ流行もその1種なのである。1年間の間に数千万人という、ものすごい数のヒトが感染し、1年間にデルタとかラムダとか、メジャーなものだけで、3回以上もDNAが変異するコロナウイルスは、まさにこの学説の正しさを「変異ウイルス対ワクチン」という形で、リアルタイムで実証しているわけである。
さて、以上は自然界の話しだが、ダーウィンの進化論が社会の階級構造を正当化する社会的進化論として流布し、社会の人々の考え方に大きな影響を与えたように、経済の世界における激しいDNAの変異は、場合によっては、自然界における変異より、もっと重要ではないかと思える。近年もっとも重要な、「経済の世界におけるDNA」とは言うまでもなく「マネー」である。ビットコインや数多くの種類がある電子マネーが世界を席巻するのを見れば、マネーの世界で、自然界のインフルエンザのような、<巨大で急激なDNA変異>が起きていることがリアルタイムで見てとれるが、このお話はまた次回としたい(2月15日2023年)。