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『CSR教育を通じた学生との対話 ― 偽善という言葉の向こうに』 豊澄 智己

私の勤める広島修道大学では、4月11日から講義が始まりました。久しぶりに教壇に立ち、心地よい緊張を終えて本稿を書いています。

本学では2年前の緊急事態宣言をうけ、全面オンライン授業へ移行しました。その時の混乱はひどいものでした。Moodle、ZOOM、google classroomやmeetといった新しいソフトへの対応、ネット環境の貧弱さによるネットダウンなど、本当に様々な事を経験しました。

2021年度は、大規模授業以外では対面授業の実施という方針に基づき、一部対面授業を開始するものの、「アルファ株」が関西を中心に流行し、5月にピークを迎えた第4波、爆発的感染を引き起こした変異株「デルタ株」による再びの緊急事態宣言、職域接種開始などの影響もあり、再び多くの授業ではオンラインへと学期の途中で変わらざるを得ませんでした。1年間の経験を踏まえて、少しはましになったものの、対面授業を途中でオンラインへの切り替えなど、少なからず混乱があったのも事実でした。

そして、今日から始まった講義では、コロナ定員、つまりは隣と隣の座席を空けてソーシャルディスタンスを確保してきたコロナを意識した着席方法ではなく、マスクなどの基本的な感染対策などを実施した上で、学生たちが自由に座席を選び、隣同士の席に座る状態で講義を受けていました。諸外国などの状況をニュースで見聞きすると既にマスクを身につけていない者のほうが多いのではないかと感じるので、あまり過敏になる必要はないのかもしれませんが、個人的には恐怖を感じます。「第7波」の兆候が見え始める中、自分や家族はもちろんのこと、学生たちも感染しないことを祈るばかりです。

さて、本日の講義の内容は企業の社会的責任についての言及でした。社会課題への取り組みを本業として取り組むべきなのか、或いはメセナのような本業と無関係な範囲での関わりにとどめるのかという命題について説明しました。当然、私の立場は前者であり、社会問題の解決に資する製品サービスを市場に提供することで、利益を達成するほうがベターであると確信しています。長期的には無論のことですが、短期的にも。実際に、サプライチェーンのグリーン化による利益創出やリスクヘッジ、CSVのような事例も数多く存在することも承知しているし、それらを授業のなかでさわりだけは説明しました。

そんな中、受講生のなかに、それは偽善だし、グリーン・CSR・SDGsウオッシュだと主張する学生がいました。彼の意識を変革できるか否か、今年度の私の目標は決まりました。(2022年4月13日)