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『環境と経営の「バランス」をどう設計するか』 片山 郁夫

近年、サステナビリティという言葉が、企業や社会の現場で以前より重く受け止められる場面が増えているように感じる。環境への配慮は言うまでもなく重要である。一方で、その重要性が強調されるほど、現場では「正しさ」と「続けやすさ」の間にギャップが生じることも少なくない。

サステナビリティはしばしば「環境を守る理念」として語られる。しかし、それだけでは、実際の経済活動や組織運営の中で十分に機能しない場合がある。環境への取り組みが経営や現場の文脈と切り離されてしまうと、施策が負担として受け止められ、結果として形骸化するリスクをはらむからである。

むしろ重要なのは、社会や経済の活動が無理なく続いていく構造をどのように設計するかという視点である。人や組織の善意や努力に過度に依存するのではなく、経営の論理、制度設計、人間行動の現実を踏まえたうえで、環境を他の経営要素とどう組み込んでいくかが問われている。

先日、日本経済新聞(2026年1月)に掲載された、ある企業の取り組みは、この点を考えるうえで示唆に富む内容であった。同記事では、AIを用いて環境対応や人材多様性、研究開発投資など多様な経営指標が将来の企業像や業績にどのような影響を与えるかをシミュレーションしており、脱炭素や人材育成を重視することで成長と両立できるシナリオが示される一方、環境目標に注力しすぎると収益性が低下する可能性も示唆されていた。ここで重要なのは、環境か経済かという二項対立ではなく、どのようなバランスを取るかが経営判断の核心になっている点である。

環境経営学会は「環境」を冠する学会であるからこそ、環境を強く語る責務を持つ。同時に、環境を特別な要素として切り出すのではなく、経営の中にどう位置づけ、他の経営要素とどのように調和させるかを冷静に探究できる場でもある。環境への配慮と企業の持続的成長が、どのような条件のもとで両立しうるのか、またその限界はどこにあるのか。そうした問いに、研究者と実務家がそれぞれの立場から向き合い、知見を持ち寄り、言語化していくことに、本学会ならではの価値が見出せるのではないか。環境と経営のバランスをめぐる実践知と理論知を往還させながら、持続可能な社会の現実的な設計に貢献していくことを、今後も模索していきたいと考えている。

(2026年2月1日)